ユマニチュードと口腔ケア
こんにちは!
札幌市豊平区にあるさっぽろプロケア歯科クリニック、訪問部歯科衛生士の
梅村です。
数年前にユマニチュードケア技法を題材にしたセミナーに参加しました。
歯科の分野ではそれまであまりなじみのない言葉でした。
ユマニチュードとは認知症ケアの一つとしてフランスで生まれたもので
『人間らしさ』『人間らしさを取り戻す』を意味する言葉です。
このケア技法は
・見つめる ・話しかける ・触れる ・立つことの支援
という4つの柱から成り立っていて、主に介護施設などで普及しつつあり、
認知症などで言葉によるコミュニケーションが難しい方とケアを通じて
ポジティブな関係を築いていくことができるとされているものです。
具体的には
・見る→患者様と水平に目を合わせて正面から見つめる
・話しかける→優しいトーンで穏やかに前向きな言葉を用いる
・触れる→背中や肩に手のひら全体の広い面積で優しく触れる
・立つ→筋力の低下予防、血液循環の改善、肺の容量を増やすなどを目的に
1日20分程度立って歩く時間を作る(立位が可能な方のみ)
この技法を介護の現場で用いたことにより攻撃的だった方がケアを
受け入れるようになった、言葉を発しなかった方が再び話すようになった
などの事例が見られたそうです。
このセミナーを聞いたあとに何か口腔ケアの際に取り入れられることはないかを
考え私なりに次のようなことを心がけるようにしています。
・見る→例え遠くから患者さんの後ろ姿を見つけても絶対に後ろから声を
かけたりせずに正面に回り患者さんの視界に入ってから話しかける。
話す際は患者さんの目線まで下がりしっかり目を見て話すようにする。
・話しかける→私は早口で声のトーンが高齢者に聞き取りにくいと言われた
ことがあるので普段より少し低いトーンでゆっくり話すようにしています。
例え毎回のことであっても口腔ケアの手順などはわかりやすいように
実況中継をしながら行うようにしています。
・触れる→唾液腺マッサージを行うときにはどうしても患者さんのお顔に
触れるのでその際の力の強さはどうか、手は冷たくないかなどを
考えながら触れます。
いきなりお顔を触られるのに抵抗がありそうな方には肩や背中などに
触れてからにしています。
・立つ
※こちらは私たちが支援できることではないので介護士さんなどに
お願いしています。
患者さんは当たり前ですが1人1人違い、その患者さんの口腔内に合わせた
口腔ケアを行うことはさることながら、接し方もまた1人1人違います。
その方の心情、性格、それまでの生活環境…また、今抱えている心配事や
身体の調子…そんな中での生活に私たちがひょっこり週に1度口腔ケアに
お邪魔する訳ですから正直歓迎されることばかりではありません。
主訴がありそこを治してもらいたいと患者さん自ら訪れる外来との違いに
とても難しさを感じる場面がたくさんあります。
しかし拒否が強くお口に触れることが難しい時にはこのユマニチュードを
思い出しコミュニケーションを取ることから始めます。
そうすることで心を開いてくださることが多くあるように思います。
このように一筋縄ではいかないことの多い日々の口腔ケアではありますが
自分も色んな経験をしながら成長していけるのもまた訪問診療の醍醐味でも
あります。
これからも毎日を楽しみながら皆さんに会いに行こうと思います!
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